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隠匿の令嬢
第4章 巣を追われた灰ネズミ
震えそうになる手で丁寧に封筒の封を剥がしていく。
『親愛なるアリエッタお姉様』との見出しで、この事態が夢や幻や、ましてや冗談でもないのを理解した。
──親愛なるアリエッタお姉様。
お元気ですか? 学校は楽しいですか?
私はアリエッタお姉様がいなくて、ひどくつまらない毎日を送っています。
でもちょっとだけ楽しいことを思いついてしまったの!
お姉様も聞きたいわよね?
きっとお姉様も私の思い付きを気に入ってくれると思うの。
文字を眼で追ううちに目眩がしてきた。
足元が揺れているのか、世界が歪んでしまったのか。ぐらり、と気持ちの悪い揺れが意識を奪いそう。
卒倒しても現実は変わらないというのを、アリエッタは嫌というほど知っている。瞼を伏せて大きく肺に空気を送り込み、残りを読んだ。
お姉様は外のことをあまり知らないでしょ? だから私がチャンスをあげようと思って。
寄宿舎への手続きはお父様には内緒でしておいたから安心なさって。
それから間違っても邸へ帰ろうなんて考えないでくださいね?
では良い休暇を。
──追伸。お父様とお母様と海辺の別荘でこの休暇を過ごします。お姉様の分まで楽しんでくるわ。
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