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Re:again
第2章 【リップサービス】
『はぁッ?!!』

驚いたのはタカシではなく私。(早口言葉みたい)
タカシはもそもそとイカゲソを口に含んでいる。

「しかも初カノ」

安田君はすりすり攻撃に飽きたようで、膝の上を転がりタカシを見た。
専売特許の、据わった目付きで。

「そう。でもそれって過去のことだよね」

タカシは静かな声で囁き、安田君にイカゲソをあーんした。

「でも俺のモノだから。過去だろうが今だろうが、コイツは俺のモノ」

イカゲソをもそもそ食べる安田君。
いやいや待て。

『‥彼女だなんて嘘だよ。そもそも付き合ってないもん』

自分の口の端からこぼれたイカゲソを千切り、安田君‥もとい爽介は私の口の中に放りこもうとする。
バシッとその手を振り払う。

「付き合ってたわけじゃないの?」

タカシがチョコレート菓子を私に差し出す。
くわえようとすると爽介が俊敏な動きで阻止した。

『安田君と付き合ったことなんかない。
私が一方的に好きだっただけ』

目を見開くタカシ。
爽介が跳ね起き、私を強く抱き締めた。
しまった―
爽介が喜んでいる。

「聞いただろ?コイツは俺のモノ」


*****

代行で送ると言ってくれたタカシから引きはがされ―
元すりすり魔にタクシーに放り込まれる。
送られたくない。送られたくない。
自宅とか絶対知られたくない。
冷や汗ダラダラ‥なんとか隙を見て逃げ出そうと心に固く誓う。
爽介は私の腕をがっちり掴んだまま目蓋を閉ざしている。
長いまつ毛がかすかに震える。
眠る姿はこどもの頃と変わりない。
顔だけはカワイイんだ、爽介は。
安心しきった様子で私の肩に頭を預けている。

そんな姿が。
先ほどのすりすり魔と被って‥
そうだ。爽介は甘えん坊なところがあった、と思い出す。
誰もいないふたりきりの場所では、膝枕やぴた~っとくっつくことを好んだ。
こどもの爽介の面影を見つけ、温かい感情が胸に攻め寄せた。
そうだ。私は、間違いなくこの男のことが好きだった。
今よりも幼い姿かたちをした遠き日のこの男のことを‥独り占めしたいと切に願っていた―

爽介の頭に頬を寄せ
筋肉質の腕を撫でる。
浅黒く日に焼け、少しだけ乾いていた。

「みちる」
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