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Re:again
第11章 【追憶の向日葵】
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―7月、私は4つの約束を交わした。

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七夕を過ぎ、走馬灯のように月日は過ぎ去ってゆく。
スーパーではお中元の包装に追われ、発送のために来る日も来る日も伝票を書いた。

変化があった。
ひょんなことから店長に販促ポップ制作を依頼されたのだ。
絵を描くこと、物を造ることに抵抗はあったが、賃金アップの魅力には逆らえない。

写実的な画風の自分にどこまで出来るかは自信がなかった。
ものは試しと、画用紙を切り絵にして立体的なポップを制作した。
白い画用紙を細く切り裂き、お素麺に見立ててお箸を持った女の子が美味しそうに食べている絵。
女の子はどこか葵や真央に似ていた。
にこにこと屈託のない微笑みを浮かべている。
パステルで頬を薔薇色に染めた。

レタリングだけは身体が覚えていた。
念のため、PCのフォントで確認しながら描いたが、我ながらまぁまぁの出来。
イベントの残り物である風船を社員さんに分けてもらい、膨らませて絵の周りを飾った。

昔はどこでも目にした手作りの販促ポップ。
ひなびた勤務先のスーパーでは笑いが出てくるほどにぴったりだった。
筆を長く持たないせいで画力は落ち、完成度はいまいちだけれど、反響はまずまずだった。

私には絵を描くことくらいしか能がない。
描くことに執着はあった。
ただ、“執着し続けること”は膨大なエネルギーを必要とする。
描くことは私にとって捨ててしまったもの、なくしてしまったものを数える作業を意味した。
だから描くことを捨てた。
余計なことを考えないために。

絵を描くまでには大きな葛藤があったけれど、描いてみるとやっぱり私は描くことが好きなのだと実感した。
遠い昔の落とし物がひょっこり手元にまい戻ってきたような、不思議な感慨を受けた。

絵だけでは食べていけない。
絵が描けるといって何の役にも立たない。
ずっとそう思っていた。でも、私の描くものを見て喜んでくれるひとがいた。
自分にも出来ることがあるのだと思うと嬉しかった。

生きていて良かったと素直にそう思った。

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