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第13章 【さよならの向こう側】
*****

“トンネルの先は別の新しいトンネルだった”と葵は言った。

葵の失踪から5日後。
早織ちゃんが私の部屋を訪れた。
水色のノースリーブワンピースに身を包み、睡眠不足なのか顔色がすぐれない。
僅かな躊躇いの後、彼女を部屋に上げた。
そのまま帰したら、道端で倒れてしまうような気がした。

「―お上手なんですね」

葵の絵に気付き、じっと見入っている。
モデルを務めた時、葵は裸だったことを思い出し、後ろめたく思う。

『‥絵画を学んでいたの。大したことないよ』

誤解を恐れずに言えば、確かに私は下手ではない。
一般的には上手な部類に入るだろう。
ただし、それだけ。
技工を凝らした絵が、ひとの心を打つとは限らない。
私の絵には“心を打つ何か”が欠如していた。たったそれだけ。
けれど致命的な欠陥だ。

「まるで本物みたいです。生きているよう‥みちるさんの眼には、葵はこんな風に映るんですね」

―似ているかも知れないけれど、抜け殻みたいでしょう?
実際の葵はもっと綺麗だもの。

そんな言葉は飲み込んだ。
私が描いた紛い物の葵でも、彼女は呆けたように見惚れている。
その思い詰めたような眼差しは、私も過去に経験があった。
早織ちゃんの心を占めている“本物”は、今頃どこで何をしているのだろう?

「―誰か、出入りしているんですか?」

置きっぱなしにしていた煙草とジッポに気付き、早織ちゃんが眉根を寄せる。

―葵は胸を痛めているのに、あなたは他の男性をこの部屋に招き入れているの?

彼女の眼差しがそう告げていた。
半分当たっていて、半分ハズレだ。
煙草とジッポは私が爽介からくすねた物で、近頃爽介はこの部屋に出入りしていない。
ただし、私は爽介と長い時間を共に過ごしている。

私が煙草を吸うという選択肢は彼女の中にはないのだろう。
誤解を解く気はなかった。
どっちだって同じだ。
私が葵を傷付けたことに変わりはない。
曖昧に微笑む。
彼女がハッと表情を強ばらせた。

「ごめんなさい‥」
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