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Re:again
第15章 【薔薇色の日々】
*****

【幸せの色は何色か】

―その答えをずっと探していた。

*****

学生の時分、私は画家を志していた。

リビングに気兼ねなく、サッと飾れるような絵が描きたいと願っていた。
家族が集うリビングには心が安らぐような、眺めていると自然と笑みがこぼれるような絵を選ぶのではないだろうかと思った。
その絵からはどこか【幸福】の香りが漂うのではないか、と。



“―私の“桃”ちゃん。”

葵のことを、そう呼んでいた時期がある。
透き通るような白い肌。
頬を紅潮させて、葵は私にくっついていた。
金色のうぶ毛に覆われた頬は、食べ頃の桃のように可愛かった。

―‥みちるさん、あのね、あのね、ずっといっしょにいたい!…

葵が向けてくれる純粋な好意が、嬉しくなかったわけではない。
目を見張るような美少年が送るひたむきな眼差しに、心がぐらりと揺れることもあった。
それでも気持ちを押し殺していたのは、葵がいつかは大人になってしまうことがわかっていたからだ。

私の名を呼び、子犬のように私の姿を追っていても、いつかは部屋を訪れなくなる。
葵が私に向ける感情は、恋愛感情ではない。
思春期の【通過儀礼】―
身近な異性に対する、恋愛感情に似た異なるもの。
二十歳を迎える頃にはそう、私の顔も名前もすっかり忘れてしまっていることだろう。

“―今はみずみずしく甘い香りを放っていても、時間が経てば過去の話。
‥きみは私のことを忘れるのね。”

葵の頬を撫でながら、私は泣いた。
薄皮が破れれば果肉がすぐに傷付いてしまう柔らかな果実のように、葵の皮膚はどこまでも無防備かつ清らかだった。

葵は困惑顔で私の言葉に耳を傾けていた。

―オレが、あなたのことを忘れるはずなんてない。

ムキになる葵が愛しかった。
皆、そう思うのだ。
その時は心からそう思うのだ。
心変わりなど、するはずがない。
相手のことを忘れる日など訪れないと―
私もそう、思っていた。

―オレは、ずっとあなたのそばにいるよ。
約束する。

葵は私の手のひらを握り締めた。
こどもなのに、葵の手のひらは大きかった。

―みちるさんは桃、好き?

“―好きだよ。”
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