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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第1章 遊びと本気
デンモクから曲を送信して、もう20分位経つ頃
私が過去に留学先で出会った“スイスの貴族”との話しや由香の最近の話しを聞いていたら、私が歌う番になった。
二人でキョロキョロしているのを見て、ご丁寧にマイクをこちらまで持ってきてくれた30半ばの男性。高そうなスーツにアルマーニのネクタイをしている。
確かに、このラウンジ自体安くは無い。此処に来ているって事は比較的、金銭的に裕福な部類に入るのだろう。結婚指輪をしていないところを見ると、あながち“独身貴族”かもしれない。
「ありがとうございます」
「いいえ、関西の方ですか?」
「えぇ。何で分からはったんです?」
「選曲・・・ですかね」
と言われ、軽く苦笑いをしてから、正面を向く。大きなテレビには曲名と歌手名がハッキリと映し出されており、これぞ関西!という感じのイントロが流れ出してからは、店内のほとんどが“あの子が歌うのか?”という目線を投げかけてくる。
「やしきたかじん、一途。ねぇ」
「何よ」
「さぁには無縁な曲だなと思って」
「それは失礼やわ。私だって心底惚れた男なら、この歌詞みたいになってまうよ」
「経験は?」
「それは、いまだ未経験ってやつやけどね」
「そうだろうと思った。」
ショートピースを右手に持ちながら渋い歌を歌う私、菊乃小百合、22歳。
私の行動や趣味、そして外見を見ても実年齢を言うと少し驚かれることが結構あった。
由香も同じ年齢で美容系の高校を卒業して直ぐに、この町に来たのだ。
私は、高校卒業と同時にイギリスの大学へ留学した。
そして帰ってきて半年。高校の時に歳相応な事をしていなかったために出来た人脈を使い今の生活を手に入れた。
それが良いか悪いかは、別にして後悔をしていない所を見ると間違った選択はしていなかったのだろう。自分の人生において。