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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第1章 遊びと本気
「え!?本当に21歳ですか?」
「えぇ。サバ読む様な人間ちゃいますよ」
余りの驚き方が少し可愛く思え自然な笑顔が浮かび上がってくる。
「すみません、てっきり・・・」
「いいえ、私は年上の方を尊敬していますので、話しかけていただいてホンマに嬉しかったですよ。」
「ーっ!」
小野田隼人、某大手電気流通会社の本社の営業本部長。32歳でこの肩書きだ。そうとう優秀に違いない。外見も少しワイルドそうに見えるが清潔感溢れていて、かっこいい大人の男性だ。
それなのに私のあの一声で顔を真っ赤にするなんて案外、ウブなのかもしれない。
「またご連絡してもええどすか?」
「さぁ、祇園の言葉出てるよ」
「あっ。またご連絡してもいいですか?」
「はい、そりゃ是非!
その前に、最後に1つお伺いしてもいいですか?」
「ええ」
「ホステスさん?」
「この町に来る前は、社会勉強として働いてた時期もありましたけど普通の環境で育ってきた、普通の女ですよ」
心なしか安心した様な顔を見せた彼。別にラウンジに来ている位なのだからホステスに偏見など無いだろうに、そこだけが妙に引っかかった。
「分かりました。連絡まってます。」
部下達にイジられて、口角を少しばかり上げながら自分の席に帰っていく隼人さん。
「ほらね、言ったでしょう。あんな野郎と終わりになってもあんたには次の男がすぐに訪れるって」
「良い人そうやったね」
「でも、付き合わない。違う?」
「違うくない。当たってる」
「本当変わってるわ。あんな優しそうなエリートと付き合わないなんて、ねぇ。」
“私なら間違いなくイクけど”とでも言いたそうな顔で残りの煮物を平らげて、甘そうなカクテルを飲んだ私の大親友。
確かに変わってる。普通なら目の色を変えて飛びつくだろう。一般的にいうエリート相手に。だけどもうお金や地位には惹かれない様になった。
日本でもイギリスでも、色んなことを知りすぎて色んな方と遊びすぎた。それが原因だ。
「さぁちゃん」
「どうしはりました?」
既に空になった私のグラスを取り替えて新しくお酒を作りながら小さな声でこう言ってきた。