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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第5章 情熱とは熱しやすく冷めやすい
日付が変わり、午前1時。
多目さんと店の前で別れて、私は自宅マンションへ戻った。
タクシーの運転手さんにお礼を言って、エントランスに入ろうとした、その時。
「おい」
「・・・・。」
「おい!!」
マンションの前で深く帽子を被り俯いていた男に声をかけられる。
「何ですか?」
「俺だよ」
「ーー・・うわ、」
心底、“今日はツイていない”と思った。
「なんであんたが此処に居るの?試合は?」
「この1週間は試合無いから日本に戻ってきた」
「なんで?」
「お前に言いたい事あって」
「部屋には入れないわよ。あんたらと関わるのもうコリゴリ」
「ハンソンとは仲良く連絡取り合ってるのに?」
「ハンソンは、あんた達の一味じゃないでしょう、関係ないわ」
「部屋いれてくれよ。この時間からメシ食いに行くのもいやだ」
「帰ればいいじゃない」
「だから、お前に言いたい事があるんだよ」
「私は話したいことなんてないの。」
「俺はあるんだよ」
「何回も言わせないで、顔も見たくない」
「だから、此処で言えないからだろうが!」
ラチの明かないやり取りに苛々したのかキツく言われる。
何でここまで私が言われなきゃなんないのよ。
「はぁ・・・。もう勝手にすれば?」
鍵をあけてエレベーターへ向かう。
後を着いて来る光を警備員さんに引き渡そうとしたが、いつものお兄さんじゃなかったから止めた。お休みかな?
ーー・・最上階で止まったエレベーター・・・。
私達は一言も言葉を発することなく、部屋の中にはいった。
彼は・・・どこかで見た事ある風景。
そう、我が物顔でソファーに座り込み、テレビをつけていた。
仕方なくお茶を2ついれて、机の上に少し大げさに置く。
怒り奮闘中の私は、煙草に火をつけて、ダルそうに彼に問いかけた。
「で、何?」
「蓮の事」
「うん、分かってるわよ。何?」
「妊娠・・してねぇよな?」
「えぇ。だけど彼とは会いたくない。彼の友達ともね」
まだ唯一、遥くらいだったら何とかなるけど。
「アイツの話し聞いてやったら?」
「・・正気?あれは合意の上での行為でもないんよ?
いわば、レイプ同様。それやのに何で私が彼の言い分を聞かなあかんの?」
「だから・・・」