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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第6章 ホワイトとブラック
試合開始20分。
ハンソン達にピンチが訪れる。
ふとしたパスのミスからブエノスにボールが回り
間をついた光がゴール前で相手を交わしているのだ。
ゴールの近くでファールを取られると
コーナーキック、もしくはPKになるらしい。
蹴るのは絶対に光だー・・。
決める確率の方が高いかもしれない。
大きな声でハンソンを応援できない事にもどかしさを感じながらブリトニーと息を潜める。
ミュラーは光の姿を間近で見れて大興奮。
もしかしたら、パパより光を応援してるかもしれない。
その時ー・・
ピピピーと笛が鳴り響き、
アーセのメンバーがイエローカードをもらった。
後ろの人が持ってきていると思われるラジオから解説が聞こえる。
"おーっと、どうやらスパイクが光の顔に当たったみたいですね。"
"当の本人は割りと元気そうですけどねぇ"
"これで、ブエノスはPK獲得です。
蹴るのはー・・やっぱり光でしょうか?"
"そうだろうね。ハンソンとのー・・一騎討ちを求めてるいるだろう。"
"アーセは、先点決められてもハンソンが取り返しますからねぇ"
私たちの回りは歓喜の声で溢れているが
ブーイングも結構聞こえる。これは、アーセのサポーターか・・。
「しゃゆり!光、PK?」
「そうよ~楽しみね~」
「光~!」
心なしか、チームメイトと何やら相談をしている柳沢と目があったような気がした。
ハンソンはー・・至ってポーカーフェイスで
流れを掴もうとしている。
「ミュラー、ハンソンって叫んで」
「なんで~?」
「ハンソン~!!」
子どもの声は甲高くて響きやすい。
そして、彼も私の事を探しているだろうから
自分の名前を呼ばれる事にはー・・敏感なはずだ。
という予想があたったのか、
私と彼はバチリーっと目が合う。
" you will win "
私の口パクを理解したのかー・・彼は、いつもの優しい笑顔で手を振りながら、こくりと頷いた。