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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第6章 ホワイトとブラック
主審が右手をあげると、静まるスタジアム内ー・・。

そしてーー・・


笛が鳴って三秒後、


光は何のフェイクも無しに、
ゴールのど真ん中を狙い、シュートを打った。


ゴールキーパーの手の少し上を
綺麗にすり抜けて、ゴールネットが大きく揺れる。



「ふぅーー!!!!!」

「きゃーぁあー!!!!」

「光~!」


再び、割れんばかりの歓声が響き渡って
耳がつぶれそうになる。ミュラーも大きく喜んでいた。

キスをされたブリトニーは・・何とも、ぎこちない笑顔。


が、私は、彼が取った行動に驚いて
そんな二人を微笑む場合でもなくなった。

光は、チームメイトのハグの嵐を上手に避けて、
私たちの目の前に走ってきたのだー・・。

大興奮のミュラーが暴れるために
私の腕は引きちぎれそうになる。


ただでさえ、ずっと抱っこしててしんどいって言うのに~・・。


「へい、光!!」

と一生懸命アピールするミュラーを見て少し笑い
ユニフォームを脱いで、私の上に被せる。


そしてー・・彼は、違うサポーターから貰ったマジックペンで私の頭を机代わりにして、ユニフォームにサインを書いている様だったー・・。

悪戯っ子の様な笑顔で私に笑いかけてから、

ミュラーにそのユニフォームを手渡すと、審判に笛を吹かれている事なんか気にしないかの様な素振りで予備で持っていたと思われるユニフォームに着替え、何事もなくピッチに戻っていった。

彼がミュラーと握手していた時の顔はー・・


凄く優しくてー・・

穏やかな笑顔そのものだったー・・。



彼が見せた行為に驚きを隠せない。自分の頭を机代わりにされたのなんか、どうでもよくなっていた。

私のメールに気付いてくれたのだろう。


それにしてもー・・何て優しい笑顔と行動だったんだろう。

あれを子どもだけじゃなく
私にも見せてくれたら、ここまで彼の事は嫌いにならなかったかもしれない。


そんな事を思いながら

光の起こした行為のせいでファールをとられ
アーセが今現在ボールを持っている、この試合をー・・決勝戦をー・・


興奮して、ブリトニーにずっと喋りかけているミュラーと一緒に目に焼き付けた。
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