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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第7章 波乱の幕開け
彼は怒らなかった。ずっと真顔でー、あの赤ちゃんを見つめている。
そして、近くにあったフェイスタオルで顔を拭いてから私の顔をしっかりとみるー・・お互い反らす事なく見つめ合う。先に口を開いたのは彼だったー・・。
「俺も血は繋がってない」
「ーーー・・。」
「こいつは、俺がずっとお世話になってた地元の先輩の子供だ。」
「宮間さんっていう人で。」
短い間だったけど、彼の性格でわかった事がある。基本的に長文は喋らない。
短くスマートな文をいつも作り上げている。
だからー・・必死にこうやって、タジタジになりながらも言葉を紡いでいるのが目に見えて理解できた。
だからこそ、何も言わずに黙って彼の話を聞く事だけに専念する。
「サッカークラブの一つ上の先輩だった。だけど、芽が出なくてそのまま大学行って、普通に就職した」
「就職先は、養護学校。体育の先生してた。」
「人種差別とか絶対しなくて。本当に心が綺麗で
"素晴らしい人格"ってのは彼のためにあるんだなーって思ってた。」
「俺、基本地元とは連絡取らねぇのー・・。
やっぱ色々問題が出てくるしー・・」
彼ほどの人間になってしまったら
手に入れるモノよりも失うモノの方が多いのかな?
妬みや嫉妬ー・・男性でもするだろう。
お金・地位・そして、サッカーの才能。
王子さまみたいな顔立ちの彼は、全てをこの若さで手に入れてしまった。
地元の人間とは
合わない部分の方が多かったかもしれないー・・
そしてーー・・
意味もなく悪口を言われたり
お金をせびられたりした回数は、数えきれないと思う。
「でも。宮間さんとは常に連絡取ってた。海外に移籍の話が出た時も真っ先に、遥や響、その時のチームメイトじゃなくて、宮間さんに連絡した。」
「いつも背中をおしてくれる、そして叱ってくれる
お兄さんみたいな人だった。」
「で、移籍して、三ヶ月くらい経った頃かな?
夜中にメールが届いたんだ。」
「結婚しました。ってな。送信者は宮間さん。」
「俺、自分の事のように嬉しくて時間関係なくすぐに電話して、色々聞いた」