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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第7章 波乱の幕開け
漫画みたいな話に息をするタイミングさえ忘れそうになるくらい、聞き入ってしまう。これが実話でー・・・柳沢の先輩の話なんてー・・信じられない。
「宮間さんの嫁さんは“花”っていうんだ。俺、移籍したてで結構忙しかったけどどうにか時間さいて、出席したの。
本当に綺麗だった。はじめてみたんだけど、脳に障害があるなんて思えなかった。」
「で、花さんの親御さんは大事な一人娘の花嫁姿見て安心したのか知んねぇけど・・結婚して半年後、二人とも交通事故で亡くなったんだ。脳を強く打って即死だったらしい」
「葬式の次の日、宮間さんからすべてを告げる電話が来た。俺、本当にびっくりして・・・何も言葉かけてあげれなかった。」
柳沢の目にうっすらと涙が溜まっているように見えるのはー・・私の勘違いかな?
「結局、宮間さんは学校を辞めて花さんの酒屋を継いだ。花さんのおじいさんから代々続いている酒屋で、結構はやってたんだ」
「俺も一回行ったことあるけどー・・こじんまりしてるのに種類多くて値段も張ってる。高級酒屋って感じだった。それなのに花さんのご両親はぜんぜん威張ってなくて・・・。
宮間さんみたいな性格の人達だった。優しすぎるっていうのかな」
「それで・・・半年くらい前かな?宮間さんと花さんが二人でイギリスに来た。
試合のチケット渡して、特別席で試合見てもらった。
花さん、ルールなんて知らないはずなのにー・・一生懸命勉強したのか知らないけど、俺がPK獲得したとき、本当に喜んでくれてた」
「外しちゃったけど、それでも試合後のディナーで励ましてくれて言葉の壁も感じなくて・・病気は治ってきてると思ってた。」
「そんな話を三人でしてたら、宮間さんがエコー写真見せてきたんだ。
忘れもしねぇ・・・何が身体で何が顔か、ぜんぜんわかんなくて、ただの塊にしか思えなかったけど、間違いなくそれは花さんのお腹にやどる赤ちゃんだった。」
「もうね、俺すごい喜んだ。」
心なしか、彼の喋り方はいつもより優しい気がするー・・・。
「だって信じられねぇじゃん?大好きな先輩が沢山の苦悩を乗り越えて、自分達の子どもを妊娠したとかー・・」