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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第7章 波乱の幕開け
「本当に何回、腹さすらせてもらったのか覚えてねぇもん。」
「ははっ。そんなに?」
「あぁ。ずっと腹さすって、三人で名前考えてた。
ウェイターにラストオーダーの時間ですって言われるまで」
「結局、花さんの初めての海外旅行は、彼女の中で満点合格だったらしい。後からお礼のメールが届いた。大人らしく、とても知的な文章だった。女から母親になるって、ここまで人を変えるんだなって思ったの覚えてる。」
「でもーー・・・花さんはやっぱりもともと、身体が弱いから・・・」
「出産するときに、究極の選択をしなければならない狭間に立たされたんだ。
お腹の子を降ろして自分の命を取るかー・・・
99%、自分は死んでしまうけど子どもを出産するかー・・・。
助産婦さんまでもが泣き出す様な空間だったらしい。」
「宮間さんから、連絡がきたんだ。“花に任せようと思う”って。
俺は第三者だから何も言えなかった。
でもー・・・残りの1%に賭けてみるのも良いかもねって返事したんだー・・・」
「だけどさぁ、結局神様なんて居ねぇんだよなーって思った。
微々たる可能性はすぐに消えてー・・
こいつを無事、産んだ4時間後、花さんは安らかに息を引き取った。」
「そんなーー・・」
「最後、花さんが、亡くなる間際、こう言ったらしい。
“優貴、決めたよ。この子の名前”
“この子は私達をつなぐ大事な子なの”
“だからー・・・紫音にしましょう。”
“紫苑の花の花言葉は、思い出”
“貴方を忘れないー・・・っていうの”
“私はこの子が居るんだから貴方を忘れない”
“だから私のこともわすれないで”」
「子どもに弱い姿を見せたくないからって、強がってる宮間さんを他所に、俺恥ずかしいくらい泣き喚いたんだ。
その時は練習が2週間なくて丁度日本に居て・・・
手伝えることは手伝ったけどー・・
それでも宮間さんの心の傷を完璧に取ることは出来なかった。
当たり前なんだけどな
愛した女が死んだんだから。」
「ーー・・宮間さんは・・・」