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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第8章 パパとママ

正直、何度も言う様に柳沢に恋愛感情は無い。
恋愛特有のドキドキも苦しさもー・・私はハンソンと関わってるときにしか感じない。

だから、柳沢と私の間に紫音が居なかったらー・・
離婚するという真実をもっと楽観的に捉えれてただろう。

むしろ“早くしたいなぁ!”なんて思っていたかもー・・・。


でもね、短い期間だけど

紫音と一緒に笑って、
紫音のために自分の時間を犠牲にして、

紫音のおかげで心が豊かになってー・・・。

私に“母性”を教えてくれて
そして“守りたい”という気持ちを芽生えさせてくれた紫音が存在している今、

簡単に離婚なんてしたくない。と思ってるのがあながち私の本音だろう。


親権は柳沢の元にいくー・・。私も裁判を起こしたら紫音を取れる可能性はあるけど、でもやっぱりここで“職業”の壁が出てくるんだ。

一応“株式”はついている会社の取締役という立ち位置でも
その会社が幽霊会社であって
表社会からの目をそらすためのモノなのは、お堅い職業の方ならすぐに分かるに違いない。


世界で彼の名を知らない人は居ないであろう程のスター選手

“柳沢光”



まったく反対の世界を生きている平凡な人間の

“菊乃小百合”



裁判なんかしてもー・・時間の無駄になることは目に見えてる。



それでも、紫音を手放したくない気持ちは強く存在しているー・・・。


「どうしたんだよ、黙り込んで」



「え?ううん。」



「キモチワリーな。」



「そうかな」




「ーー・・言い返してこねぇ所も気持ち悪い。」


「明日どこいくんよ?」


「あんたが決めていいよ。」



でもーー・・


でもーーーー・・・。



この条件を呑んだのは私だ。

過去を悔やむ暇があるなら
一生消えない思い出作りに専念するほうが利口な判断だろう。




「じゃあ・・・水族館行こっか」


「あーいいな。分かった。13時までには出るから用意しといて。」

「うん。ミルクもちゃんと持っていかなアカンね。」


「そうだな、オムツと後一応、軽いブランケットみたいなのも」


「オッケー」


「明日は自分の車で行くから。服は向こうで着替えるから下着いたら電話する」

「電話きたら降りたらいいんよね?」


「あぁ。あんたは車出さなくていいよ。」

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