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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第8章 パパとママ
夕飯の片付けを終えて、化粧を落としベランダに出る。
“し~お~ん”
“パパって言ってみろ”
なんて親馬鹿丸出しの声が聞こえてきてどこか微笑ましくなりながら煙草に火をつける。3人で暮らしてから、一日に5本くらいしか煙草を吸わない様になった。
絶対に紫音の側では吸わない。だけど柳沢は基本的に朝から夕方ごろまで仕事のときが多いから・・吸いたくても吸えない状況が続いてたって言うほうが正しいのかな?
紫音がぐっすり眠っているといっても
一人部屋に残してベランダで煙草吸うのはやっぱり心配だし
だからといって
少しの間だけでも面倒見てくれる人、つまりこの子のパパはお仕事だ。
私がー・・付きっ切りで面倒を見ているのだから吸えなくて当たり前。
そんなヘビースモーカーだった私にとっては、この時間はとても幸せ。
柳沢も、育児を手伝ってくれるほうだし、私がもともとヘビーだったのを知ってるから“吸ってきていいよ”と言ってくれる。
まぁ彼も、紫音と二人で
ゴロゴロしたいんだろう。本当に溺愛してるしねー・・・。
けれど、今日は何か、そこまで至福のひと時とも感じない・・・。
理由は自分でわかっている。“契約期間”のことが頭に残っているんだろう。割り切ってるつもりでも内心は割り切れていないー・・そんな事が何回あったか。
今はすっかり懐かしい隼人のときもそうだった。
その場の気持ちで彼を切ったのはいいけど、後から謝罪のメールをいれた、ということはどこかで割り切れていない自分が居たのだろう。
そして今回のことに限っては
付き合うとかそういう甘ったるい話じゃなくて
生後三ヶ月の赤ちゃんが絡んでいるんだー・・・。
簡単に割り切れる人間なんてそうそう居ないはず。
よっぽどの図太い女でも、悲しくなる日はあるだろう。
甘いと評判の煙草も
何だか、苦いと感じてしまう。
時間を開けて吸ったからじゃない。
絶対に気持ちの問題ーーー・・・。
もう何度もため息をつくしかなかった。
綺麗な満月が、余計私をそんな気分にさせているのかも。
そんなロマンチックなことを考えてた私は
柳沢が、紫音を抱きながら、じっと私の様子を伺ってたことに気がつきもしなかった。