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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第8章 パパとママ

「うぅぅうう!!あぁー!!!」
赤ちゃんらしい高い声がベビーカーの上から聞こえる。私達が使っているのは対面式のベビーカーのため、紫音の表情が逐一でチェックできる。
良い日にこれた。風はほどよく冷たいけど太陽はかんかん照り。平均気温は26度らしい。何とも過ごしやすい日なのだろう。
紫音にかけてあげてたブランケットは、もうただのヨダレまみれの布だ。
私は柳沢を、ここ、緑公園に送ってから一回コンビニに引き返し、お茶や軽いお菓子を買った。どこかベンチで座りながら食べたら気持ち良いかな?と思って。
でもーー・・・事態は急変。
まさかのまさかで、柳沢がお昼のお弁当を車に置き忘れたまま練習場に入っていったのだ。話によると、昼食は出ないらしい。まぁ・・・時間も時間だしね。12時スタートなんだから、お前達家で食べてこいよってトコだろう。
あの人が、朝もっとすんなり起きてくれたらー・・
昼食を食べてから出掛ける余裕もあったのに・・・。
凄い人だかりと歓声ーー・・。
とりあえずは、これらも13時半には一旦終わる。
選手達の休憩が1時間挟んであるからー・・野次馬が居なくなったら、警備員さんに事情を説明しよう。彼がメールを見てくれたとしても、こっちまで取りに来ることは不可能だし・・・。
ベビーカーにロックをかけて隅に置く。
そして、私は紫音を抱き上げて、コートの近くまで歩み寄った。
「お!お姉ちゃん、子どもをサッカー選手にしたいのかい?」
「へ?あぁ・・・そうなんです」
威勢の良いおじさんだな・・・。ユニフォームは、もう何度も洗っている彼のモノのレプリカ。柳沢のファンなんだろう。
ーー・・にしても若い女の子が多い。
周りを見ても、コート挟んで向かい側を見ても女ばっかりだ。
少し派手な子から
スポーティーな子、地味な子。本当にいろんな種類の女性が居る。
しかもーーー・・柳沢のユニフォームレプリカを着ている子が何と多いことか・・・。
私達が結婚したらファンを辞める人も中には沢山居るだろう。
ここで単純な疑問がうまれた。
その人たちは・・・彼のどこに惚れたんだろう?
出会える確立は多いにある。私だって彼や響、ハンソンと出会って、そして何と・・・今“柳沢光”と結婚している状態なのだから。

