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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第8章 パパとママ

でも・・・出会えたとしても、彼を惚れさせるのは難しいし、彼に合わせることも難しい。
朝は起きないわ、ワガママだわ、子どもな所あるわ、でふんだりけったりだ。
自分でも何でそんなにストレスを感じていないのか本当になぞ。
結婚する前はストレスまみれの生活を予想してたけどー・・実際は案外違った。確かにイラッとするときもあるけど、ストレスとはまた違う。何だかんだ、この日常を楽しんでいる自分が居るのは確かだ。これも・・・紫音のおかげかなぁ?
「ほらよ、前で見な!俺は、もう仕事あるから、どうせ行くんだ」
「いいんですか?」
「あぁ!」
紫音の頭を撫でてくれるおじさんにもう一度お礼を言って、最前列で見させてもらった。赤ちゃんを抱いて、この位置って大丈夫かな?顔とかに・・当たんないかな?
“はい、もう一回ー!!”
太いコーチの声がまともに聞こえる。
軽いパス回しの練習?・・・ハンソンも、こういうメニューの練習をするのかな?
私達側に一番近い選手は・・・岸野くんと柳沢。
彼は必死なのかぜんぜん私達に気がついていない。
いや・・・必死じゃないか。もう結構な日数を一緒に過ごしている私にしか分からない事だと思うけど・・・柳沢はかなりリラックスしてる。遊び?と思うくらい。
それに比べて、岸野くんは超本気だ。
パス回しなのに・・・情熱を感じる。
正反対の二人。でも、そのコンビがファンにはたまらないんだと思う。
歓声が鳴り止まない。
“光!シュート練習だぜ、次!”
“あぁ。”
アイツ・・・チームメイトの前でも、あんなに無愛想なんだ。
一人で空回りをしてる岸野くんに何だか同情してしまう。
“あえて”サポーターを見ない様にしている柳沢は終始うつむいたままだ・・・。
おなか減ってるのかな?
笛の音が響き、各自ボールを持ってPKの位置に移動する。
ストライカーだけでよくない?
まぁ代表戦を考えての練習だからー・・誰が蹴っても大丈夫にするためなのかな?
はじめは背番号1をつけた選手。
綺麗にカーブがかかったボールを蹴り、キーパーの少し上を通り抜けて見事ヒット。
ファンからは惜しみない拍手。
中々かっこいい顔立ちだなぁって思ったのは秘密ね。

