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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第8章 パパとママ

そして、岸野くんから全然知らない人へと進みー・・

次は柳沢の番。


やっぱり群を抜いている、人気もファンの声援も。
紫音もどこかうるさそうな顔をしていた。

「パパだよ。」

誰にも聞こえないよう、小さな声でぼそっと言う。


そしてーー・・、どこかの試合でも見た様にど真ん中に速い球を入れ込み、見事ゴールキーパーが動く前に成功してみせてた。あのゴールキーパーが下手なんじゃない。反射神経が悪いんじゃない。柳沢のサッカー能力が優れ過ぎているだけだ。

「きゃああぁあ!!!」


割れんばかりの歓声・・思わず、紫音を深く抱き締める。こんなの間近で聞いて鼓膜破れたらどうすんのよ。本当、興奮する気持ちもわかるけど、考えてほしい。

もう歓声なんて聞き飽きて何も思わないのだろう。また俯きながら、自分の場所へ帰っていく彼。

みんな、口を揃えて"柳沢は良い人"っていうけど・・これのどこが良い人?ハンソンならファンサービスの一つや二つしてくれると思うけど。


「光くーんっ!」


「柳沢~!」


甘ったるい声が次々と響き渡る。他のチームメイトも苦笑い。ここまで人気出るのすげぇな・・って思ってるのか、それとも同情してるのか・・?

「柳沢~!!!」


負けじと私も叫んでみた。理由なんてない。
ただ、こういう時は周りにノリたくなる。

もちろん、紫音に悪影響が及ばないよう深く抱き締めながらー・・。


別に大きくなかった声量。

他の女の子とも被りまくってたしーー・・


でも彼は顔をあげて、辺りを見回してー・・

一番前の列にいる私達を見つけた、すぐに。



「馬鹿。」


口パクで、そんな事を言ってのけた。

本当に馬鹿だ。眠いのか何なのか知らないけど
お弁当くらい持っていきなさいよ。

私の言った事が分かったのか分かってないのか
いつもの意地悪な笑顔を私に向けるとー・・岸野に何かを伝えて、一緒に水をのみにいく。


もうすぐ、終わりか。

一次練習はーー・・。


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