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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第8章 パパとママ

観客が捌けていきだすタイミングを見計らって警備員さんに声をかける。
「すみません。」
「はい?」
「これ、柳沢さんに渡してほしいんですけど・・・」
「あー差し入れは受け取ってないんだよ。」
「そうなんですか?」
「うん。選手に直接渡すしかないかな。練習終わりに」
練習終わり・・・夕方じゃない。ダメよ。
「あの・・・一応妻なんですけど」
「誰の?」
「柳沢の」
「---・・はは!彼は結婚していないよ」
それは貴方が知らないだけでしょう!してるわよ!
「いや・・この子も彼の子どもなんで・・・」
「はぁ。だからね、何回も言うけど・・」
とあきれた顔をした警備員さんが言葉をつむごうとしたとき、私の携帯が鳴り響いた。ナイスタイミング!
「もしもし?」
「警備員に代わって」
「え?見てるの?」
「あぁ。いいから早く。」
画面上に表示されている“柳沢”という文字を見せると、目が見開いていた。
「もしもしー・・」
「あ・・・!はい!勿論です!!」
この態度の変わりようよ・・。本当にびっくりしたいのは私だ。
まぁ厳重な警備が必要なのはわかるけどさ。
「すみません、こちらへどうぞ!!」
先導されて、建物の中に入っていく私。質素な建物だ。まぁ、それもそのはず。これは代表の為のモノじゃなく、緑公園にもともと設置されてあるモノなんだから。
光と同じ青色をしたユニフォームを着てる男性達や
テレビ関係者の横を通り過ぎて、案内されるがまま歩く。
着いたのはーー・・一番奥の部屋。
ドアには“選手以外立ち入り禁止”の文字。
私・・・入っていいの?
「失礼しまーす!!」
「はーい。」
と愛想の良い声・・・。この人が選手なら、きっと代表メンバーのムードメーカーなんだろう。
恐る恐る、中に足を踏み入れた。

