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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第8章 パパとママ

ど真ん中のイスに深く腰掛けている夫を見つける。
「遅い。」
「遅いって・・・忘れたのどっちよ。」
「紫音、寝てねぇの?」
「うん。普段なら寝てるんだけどね。
サポーターの歓声に圧倒されたんかも。」
「離れて見るか?」
「なんで?」
「こいつの耳に悪いだろう。あんな甲高い馬鹿みたいな声」
「はは。それは・・・そうかもね。私も同じ事思ってた。」
「隣の部屋使っていいぞ。俺から上の人に言っとく。」
「本当?」
「あぁ。ポットも水道もあるから、もしミルク必要なら勝手に使え。」
「わかった。ありがとう」
お弁当を受け取って、皆の前でがっつく彼ー・・。周りの人が驚いているのは言う間でもない。そりゃそうよ~この人は結婚してるって公表してないもの。でも・・ここに入れて、尚且つこんな会話・・・普通のカップルじゃないのは一目瞭然だ。ただの“夫婦”にしか見えない。
「おい、光」
「あぁ?」
「あ、岸野さん」
「はじめまして。」
「はじめまして、小百合です。」
「--・・だれ?この赤ちゃん」
「紫音。」
「いや・・名前じゃなくて・・」
「俺の親戚の子ども。小百合は母親の妹の娘だ」
「え、でもお弁当とか・・・」
「こいつの喋り方聞いてわかんねぇ?
もともと、出身はこっちじゃないんだよ。
この街に来て、まだ少ししか経ってないから
俺の家に住んでる。それだけの話だ。」
「あぁ・・なるほど・・・」
私のことを配慮してくれてるー・・。こいつの性格なら“俺の子ども”っていいかねないと思ったのに。何か変な気分。うれしいんだけどねー・・・。
慣れてないからだろう。
「生後何ヶ月?」
「もう四ヶ月ですよ。」
「へぇ!大きな子だね!抱かして」
「勿論。」
紫音を、たどたどしく抱く岸野くんの顔は、凄く優しい。きっと子どもが好きなんだろうな。サッカー選手って子ども好きな人多いよね・・?何でだろう。
「しおんくーん」
「大きくなったら柳沢みたいにサッカー選手になるのかなぁ?」
「どうだろう・・。でも、なれたらいいわね。」

