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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第9章 主婦の長期休暇
「え?」
緩やかに動いていたティーカップが勢いよく、動きを止める。宝石を幻想させる綺麗な輝きも消えて真っ暗になってしまっていた。
・・・・停電?
「うわぁああん!!」
いきなり起こった激しい衝撃に吃驚したのか紫音が珍しく大きな声で泣き出す。立ってあやしてあげたいけど、この状況では無理だろう。
地面から何十メートルも離れている。
簡単に説明したら頑丈なワイヤーで吊るされている様な感じだ。
ーー・・うそ、有り得ない。
「焦んなよ」
「でも・・。」
「大丈夫だよ。ただの停電だ。」
ただの停電・・。でも、それなら代わりの電気がすぐにつく筈だ。放送アナウンスも流れていない。この無音の空間。なんとも居心地が悪いんだろう。
前後のお客さんは子連れだったのかな?
ママァ!と叫ぶ声や
泣き叫ぶ声も聞こえる。
紫音も、その声の内の一人だ。
「ーー・・大丈夫なんかな」
「あぁ。」
なんで、この人はこんなに冷静で居られるんだろう。
確かに焦りは禁物だけど、こんな予想外の出来事に遭遇してここまで冷静で居れる人なんて・・本当に数少ないと思う。
「紫音、大丈夫だよ」
軽くからだをポンポンと叩いても
揺らしても何をしても泣き止まない。
周りのお母さん達も
必死の思いで子どもをあやしてるんだろうな・・。
"え~すみません。こちら安全対策係のものです。ただいま近くの湖に落雷をした事が確認されました。この一連は、その落雷の影響によるものだと思っています。代わりの電力を使い今から辺りに電気をつけて、ワイヤーをさげていきます。係員のものが近くまですぐに参りますので、指示に従ってティーカップから降りてくださる様にお願い申し上げます。"
落雷ーー・・吃驚させないでよ・・。
雨なんて、降りそうな天気じゃなかったのに。
まぁ雨が降ってなくても雷鳴る時は確かにあるけどさ・・。
放送が終わって数秒後
確かに真っ暗だった視界が急変した。
目がいたくなるほどの明るい空間・・。
そして、ワイヤーがゆっくりと下がっていき
私達の身体も地面に近付いていったーー・・。
「すみませんでした!」
必死に謝るスタッフの方がすぐに駆け寄ってきて、ティーカップの扉の鍵をあける。