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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第9章 主婦の長期休暇
「ゆうとくんねサッカーしてるの!!光の事すごいすきなの!!」
「そうなの?すごいじゃん。ポジションは?」
「ゆうとくんは、左サイドバックだよ!!」
「おっ。いいなぁ。俺達はサイドバックの力が無かったらシュートが打てないんだ。一番良いポジションだよ。」
「ほんと?!」
「うん。本当。将来は何になりたいの?」
「ゆうとくんはブエノスに入りたい!」
「そうなんだ~ちゃんとアーセ倒してくれよ?」
「うん!!あ、ねぇ写真撮ってもいい?」
「写真か~一枚だけな。」
と言ってから、ゆうとくんと自分の事を呼んでいる男の子を軽々と抱き上げて、その子の両親の元へ歩いていく柳沢。
私は間をあけて、彼の後ろをついていく。
「すみません!いいんですか?!」
「いいっすよ。どうせ来るまで暇だし。」
品の良いお母さんは腰を低くして、柳沢にたくさんお礼を言いながら一眼レフのカメラを向ける。
男の子は興奮しきっているのか、ピースが出来ていなかった。指が3本ーー・・はは、なんだあれ。
思わず笑顔になってそれを見つめてしまう。
ゆうとくんのお父さんは、すごく優しそうな人だった。とても仲良しの家族なんだろうなぁ。
「ありがとう!光!」
「おう。頑張ってブエノス来いよ~」
「うん!カンテルから目指すから待っててね!」
「あぁ。もちろんだ。」
カンテル・・ブエノスの下部組織か。
そんな事をあの年で知ってるってことは、よっぽどサッカー少年なんだな。
からだをゆっくりと左右に動かすと、抱き抱えられている紫音は、その揺れが心地良いのか、いつもの愛想のいい笑顔を私に向けていた。
そしてーー・・こちらに帰ってくる暇もなく、写真を頼まれている柳沢・・。
小さい男の子や女の子が相手なら
しっかりと抱き抱えてあげている。
あぁいうところが優しいとされる部分なのかな・・?
子どもがいない、自分とおなじ年くらいのカップルには拡散するなって念を押している様にも見えた。
そんなこんなで、撮影タイムおよそ25分が終了し、私達は特別ゲートを通って外に出る。
謝罪の気持ちなのだろう、スタッフの方々から私達全員に特製クッキーとレストラン無料の券が配られた。