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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第9章 主婦の長期休暇
ふとテレビをつける。すっかりと秋に変わってしまった窓からの景色・・。綺麗な紅葉が、マンションの下の木々を彩っていた。もうそんな季節か・・。
はじめての代表達の試合は三日前無事に終了した。
机の上に並ぶ、少し遅めの朝食。
紫音はスヤスヤと柳沢の横で眠っているだろう。
香りでパパを起こすかの様に、土瓶蒸しから秋らしい松茸の匂いが微かに鼻をそそる。とうもろこしの天ぷらとししとうを使った和風サラダ、そして冷やしざるうどん。結構楽そうな料理に思われるけど、手はこんだ方だと思う。
紫音を起こさない内に私はソファーに深く座り煙草に火を付けた。
テレビに映るのは三日前の代表戦ーー・・。
ガーナと同点で時間オーバーになった。
両者一歩も譲らず、一点のみーー・・。
監督の選手配分も交代枠も文句無しだと、素人の私は思ったけどどうなんだろう?
選手評価は勿論柳沢が満点の10。
守備も攻撃も完璧だった。そして極めつけは最後のPK。珍しくカーブをかけた球を蹴った彼、やっぱり意地でも勝ちたかったんだろう。
私と紫音が見守る試合だしーー・・。
日本が無事勝利し、ヒーローインタビューを受ける彼の背中を見ながら本当に喜んだのが三日前の事とは思えない。昨日の晩って言われても間違いだと指摘しないくらいすべてが鮮明に頭に残っていた。
国民が、二年後に迫るワールドカップに期待しているだろう。前監督は一身上の事情でいきなりの退職・・。みんながどうなるものか、と息をのんだ記憶さえも新しかった。
私の頭は、もうすっかり彼の影響でサッカー1色になっている。
そんな自分に半分あきれながら、私はいつもの様に彼と紫音を起こした。
「起きてよ。」
「ーー・・。」
「ハンソンと空港でまちあわせしてるから迎えに行かないと駄目なの。」
「ん・・・・。」