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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第9章 主婦の長期休暇


柳沢の車内でよく流れている音楽が此処、ウィストンホテルのロビーにも流れていた。イギリスメーカーの椅子に腰掛けながらハンソンがチェックインを済ませるのを待っている私。

ここから見える喫茶店の名前が"マセラ・ズ・ポーカー"。何語だよ!って突っ込みたくなる様なネーミングセンスだけど人の入れ替わりが激しい所やウェイター達の行動をみる限り中々良さそうなお店だ。

まぁ、このホテルに入れるくらいだから最低ラインがわかりきってる。一般世界の中の上で、ギリギリ審査が通るくらいだろう。店舗の知名度や質、経営状態など。

色々な壁を乗り越えて、やっとこういう一等地に店をだせる。飲食店を経営するのは本当に難しいことなんだろうなぁ。


「終わったよ。」

「ありがとう!前金?」


「小百合は気にしなくて良いよ。
さぁ、鍵を貰ったんだ。とりあえずホテルに入って荷物を置いて一休みしよう。運転疲れただろう?」


「まぁ、疲れたけど・・二日の滞在なのよ?遊ばないと損じゃない?」


カツカツとヒールがロビーに鳴り響く。

少し前を歩いているおばさんだろう。
300万はくだらないバッグを持っている。

ーー・・まぁ、セレブだろうな。


「そうだね。でもそれ以上に・・小百合とでしか味わえない時間を過ごしたいんだ。」


「・・・・さすがコロンビア。紳士な人が多いわね。」


「それを言うならイギリスだろう?」

「イギリスの裏側は色々と知りすぎたわ。
幻想だけで生きていけたらよかったけど」


「僕の中での日本人女性のイメージは今も尚変わっていないよ。君が素晴らしいからだろうね。」


「なに?イギリスに感化されちゃった?」


「本当に冷たい女性だ、小百合は。」


この人は本当に優しい。エレベーターに乗る時も絶対に先に通してくれるし、今もこうやって然り気無く私の荷物を持ってくれている・・。こういうのを"紳士"っていうんだろうなぁ。

ベラベラ持論垂れ流して自分で自分のことを紳士だ!という男共に見せてあげたいよ。彼の素晴らしさを。

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