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第1章 遊びと本気

「彼氏？」
「まぁそんな感じやったかな、過去の人やけどね。」

「ハヤトって名前じゃねぇの？」
「ー･･へ？」

「さぁちゃんが、あのサラリーマンから名前聞いたときのあの顔ー･･何か言いたそうな･･上手く説明できないけど、そんな顔だった。しかも。このマグカップもカップル用みたいなやつじゃん？Sが小百合のSだとして、Hはー･･あのリーマンと同じ名前なのかなって」

「蓮君、俳優やめて探偵したら？」
「バカ言うな。」

「凄いよ。大当たり。」

「これでも一応、次の主演ドラマは刑事モンなんだよ。役作りの為にハードボイルドの刑事物小説とか読み漁って、そうしていく内に小さな事を大きなことに結び付けれる様になった」

「へぇ･･･。」

素直に関心だ。いまどきの俳優で役作りの為に、それと近い人物が出ている小説を読み漁ったりすることなんてあるのだろうか？船隊モノや特殊なのなら、まだしも。刑事ドラマが多い今でも、そこまで感情移入できていて、徹底している人は話しを聞く限りでも、この目で見る限りでも居ない様に思えた。

「何？凄いと思った？」
「仕事できる頭の良い男性、と思った」

「真顔で言うなよ、照れる」


「本心やで。とりあえず、お風呂はすぐにたまるから、その間くつろいでて。灰皿は、その黒いので、麦茶のおかわりは、焚かなきゃ無いんやけど、あそこの機械から出るお水は冷たいし飲めるからね。」

「あー了解。ありがとう」



鼻歌を歌いながら、お風呂の温度を設定して、
私は寝室に入り、蓮君の服と自分の服を取り出す。

蓮君の服は、洗面台の横の衣服置きに、バスタオルとホテルなどに置いてあるハブラシと一緒に置いておくことにした。その下の段に私の服を置く。


「へぇ、ハットトリックか」

「ん？」


「何もねぇよ。」
「そう。あ、入浴剤なんやけど、白色のボックスの中に何種類か入ってるから、そこから選んでね」

「はーい。それよりさ、隣のおばあちゃんと仲良しなの？」
「うーん、仲良しっていうより、若いのに一人でこの町に出てきたのを知ってから凄い可愛がってもらってるんよ。」

「例えば？」

「お漬物の話しの件みたいなのは沢山あるよ。他にも、この町案内してくれたり、色々助かってるんよ」

「一緒に居たら癒されそうだもんね。」
「そうそう。未亡人だから、色っぽいし、優雅やしね」