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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第11章 魔法の検査薬
「一応、チームにも日本サッカー協会にも、優勝してから傷の状態は説明した。皆あんぐりしてたよ。その状態で、あそこまでのプレーをしたのか!?って」
ーー誰でもそう思うでしょう。
普通の生活でも、彼のプレー面でも、
腰が悪そうなんて思ったことはなかった。
他の選手よりも運動量が多いのは変わらないし、
的確なシュートも沢山放ってたー・・それなのに・・・。
「でもな、正直なところ。
痛みなんていうのは、痛み止めで治るんだよ。
たかが試合の1時間、2時間程度なら。
でも、後々のことを考えてみろ。
他の選手が練習してる間、ベッドで寝てて、
復活しても同じメニューをこなせるとは限らない。
手術ってのは必ずしも“救われる”訳じゃないんだ。
時と場合によっては
ーー・・すべてを失う可能性もある」
「ちょっと待って。傷の状態は?」
「悪いんじゃねぇの?
今すぐにでも手術しろってのはずっと言われ続けてるし」
「でも、完全に復帰できない!って程のひどさじゃない。
俺が気にしてるのは
“今までと同じレベルのプレー”が出来るかだ」
「裏返せば、サッカーは出来るって事よね?」
「それは大丈夫。」
「するの・・・?手術。」
「あぁ。イギリスとの試合が終わったらな。」
「なんでっ!今すぐにでもー・・・っ!」
「俺にとって
“イギリス対日本”は何よりも大事な試合だ。」
そう言い切られて返す言葉がなくなる。
ーー・・大事な試合かもしれないけど
それ以上に大切なのは“貴方の身体”でしょうっー・・。
「もっと早く言ってよ・・・」
先ほどよりも強く抱きしめた。
彼は何も言ってこない。
「仮にも夫婦やんっー・・・。
一人で辛い思いせんでてよー・・。」