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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第11章 魔法の検査薬
光沢あるグレーのスーツか・・・。
黒とグレーのストライプの様なスーツ・・・。
もしくは真っ黒。
間違いなく全部似合うんだよね。だからこそ迷ってしまう。
この前テレビにチラッとうつってたのを見たときは
確か真っ黒のスーツに、シンプルなネクタイをしていた・・・。
ネクタイに合わせて買うなら、真っ黒になる。
でも同じ様なやつ二枚も要らないでしょ?普通に考えて。
それなら間違いなくグレーよね。
私、グレーのスーツ似合う人好きだし。
迷いにまよっていたとき、後ろから覚えのある声が聞こえた。
「さぁ・・・?」
振り向きたくないー・・
今、振り向くとあのときの記憶が全部よみがえってしまいそう。
どうして・・幸せになりそうなときに限って、
こういう思いをしてしまいそうになるんだろうか?
「なぁ、さぁだろ?」
あーもううるさい!!!
そう叫んでやりたかった。
だけど、元気そうに何か喋っている紫音を見て、どうにか思いとどまる。
そうだ、普通に考えてみろ。
私はもう昔の“菊乃小百合”じゃない。
この子の母として、まっすぐ胸をはって歩く必要がある女、つまり・・・“柳沢小百合”なんだー・・。
いつまでも被害者ぶってたらダメよね。
自分の非っていうのを見つめ返してー・・。
前を向いて、強く歩いていかないとー・・・。
「・・・久しぶり・・・」
ーー・・久しく見ていなかった蓮は
どこか体格が男らしくなっていて、
相変わらずのかわいい笑顔を私に向けていた。
そしてー・・その横に、響と遥くん。
あぁ、もう本当夢を見ているみたい。
この三人が、ここで買い物ー・・?
ありえないでしょ。
周りのお客さんも、気付きはじめる。
だけど、騒がないのがそれぞれの品位を物語っていた。
「あ、小百合ちゃんじゃん。」
「うわ・・・」
うわ・・・って何よ。私がそういいたいわ!あんたにね!
酒癖の悪さ、どうにかしてほしいものよ。
浅草響くんっ!!
「久しぶりだな。ここで買い物?」
「うん。スーツ見てるの。」
「ーー・・・へ!?この子、さぁの子?!」
そっかー・・この人達は、
光から何も聞かされてないんだ。
隠し通さないといけないわねー・・