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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第12章 前夜祭


大きなホテルの駐車場に車を停めてから、私は少し離れて彼の後ろを歩く。勿論、紫音を抱くのは私。

「あ、すみません。招待カードの方は?」


「前の方が三人分のカードを持っている筈なんですけど。諸事情で一緒に歩けないのでー・・」

「承知致しました!中へどうぞ」


女の人に確認をとってから、身長の高いホテルマンの方がパーティー会場まで案内してくれた。

一般の宿泊客の目につかないように別ルートが用意されてあるのを見て、驚く。これから入る会場はー・・ハンソンに経験させてもらったモノと同じくらい華やかな場所。今は徹底的に自分を演じるしかない。


「大丈夫か?階段あるぞ。」


さりげなく腰に手を回してくれる彼。
此処に入れば、同業者ばかりだから、さほど人の目というものを気にしていないのだろう。



「一番前の席だ。」


と言われて、エスコートされながら、私は柳沢光と書いてある置物の前の椅子に座った。

目の前の丸テーブルには、沢山のフルーツと、ケーキ。全部一口サイズにカットされてあるから、嬉しい気分になる。



「飲み物は?」

「ワイン・・じゃなくてお茶で。」


「あぁ。」


彼にそう伝えて、ふと顔をあげた。

テーブルの向かい側にはテレビで大活躍してるモデルさん二人。とても美人でー・・目が逸らせない。


「あ、小百合ちゃん?!」


「岸野くん!!」



私に声をかけてきたのは、岸野くん。柳沢の次に人気があるらしい日本代表のサッカー選手だ。


「何で此処に?!」

「俺が誘った。」



「なんの為に?」


「女避け?」


公開練習で、かっこいいなぁと思っていた背番号一番の人も私の前に現れて、岸野くんの隣に座った。


柳沢・私・岸野くん・しらない人・モデルさん二人の順番。上手に円を描いて座っているため、柳沢の逆隣はモデルさんになる。

「はは。なるほどな。

旦那さんは?大丈夫なの?」


「うん。家の夫は、そういう面は放任主義かな」


「へぇ、いいなぁ。」


紫音の手をさわりながら、そう呟いた岸野くん。

放任主義ー・・なのかなぁ?
隣にいる彼は、変なところに過剰に反応する。


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