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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第12章 前夜祭


「少しだけ、ヒント下さいよ~」

一人のモデルさんが、そんな事を言う。

綺麗な茶髪のロングの髪に、大きい目と高くて細い鼻。外国人とのハーフだから、とても可愛らしい。鼻の下にある黒子が童顔なヘビーフェイスとは対照的にセクシーだった。


「・・ーー。」


ジントニックを飲み干してから、コンパニオンの人にもう一杯。次は焼酎の芋を頼んでいる光。

岸野くんも、お酒が入っているからか、引く気はない様だ。華やかな場所での下衆なトークがはじまる。


「ハンソンが今、アーセから51億だぜ。それより多い?スポンサー収入なしで!」


「だから言わねぇって。」


スポンサー収入とは、その言葉のままの意味。

例えば、カメラや雑誌で、スポンサー企業の洋服を着たり製品を使ったりして、宣伝をする。その代わりに毎年、お給料をもらうのだ。それがスポンサー収入。

多くのスポーツ選手は、そのスポンサー収入が半端じゃないらしい。


「えぇ!なんでだよ!それより多いか少ないかだけ教えてくれたら、満足じゃんねぇ?」

野獣フェイスとは裏腹に、まるで居酒屋のおじさん見たいなトークを繰り広げている岸野くんに、冷めた目を向けたけど、その目線に気がついているのは位置的に宮元くんだけ。


「それ言ったら、この話止めんのか?」


「あぁ!」

「勿論っ!それだけ聞きたいよね~」
「うん。お金目当てとかじゃないけど、気になっちゃうよね。ここまでのスターだとっ!」


お金目当てじゃないってー・・よく言えたものだ。本当にお金目当てじゃない女の人なら、普通こんな場所で年収の話なんてしないわよ。



「スポンサー収入抜きだよな?」


「そうそう!」



この空気を早く終わらせたかったのだろう。光は意を決めた様だった。


「はぁ。ーー・・多いよ。」



「「えぇ~っ??」」


驚きの声が飛ぶ。隣の席の人も盗み聞きしていたのか、驚いた顔でこちらを見ていた。

ってかー・・普通、年棒って公開されるんじゃないの?この人は例外なのかしら?



「これで、この話終わりな。

俺、挨拶いってくるから。小百合行くぞ」


「う・・うんっ!」


ハンソンよりクラブからのお給料多いのも少しだけ納得。以前、彼から"ブエノスの方がアーセよりお金持ち"って教えてもらったし。それも関係してるのかな?



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