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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第12章 前夜祭
口調はとても丁寧で、おとな。どうして、一緒に喋っていた時も、こんな風に喋らなかったんだろう?
あんな馬鹿っぽく振る舞う方が逆効果だと思うけど。
「ー・・可笑しいのかも。」
「ナニソレ。」
「だけど、私は彼と何の関わりもないわよ。」
「別に貴方が彼の彼女だとしても、何でもいいんだけどね。私が奪うだけだから。」
「そう?じゃあ、そうしたら?
もっとも、彼は今フリーだと思うから
奪う以前に、すごく簡単な恋愛ができると思うけど」
「簡単?」
「えぇ。貴方が内面も魅力的な女性ならー・・面白くない様な恋愛になるわ。追いかけなくてもいいもの。」
私は現に彼を追いかけていない。
追いかけられている立場だーー・・、
「彼の優しさ、今、充分過ぎるほどに受け取っておくことね。」
「・・・・。」
「その優しさは、いずれ私に向くだろうから。
宣戦布告ってやつ。」
「はぁ。妄想癖あるんじゃない?」
「何とでも言って。いずれは、わかる事だわ。貴方が彼の何なのか、彼は誰を好きになるのかー・・」
綺麗な髪をなびかせて、私の元を去っていった彼女。杏奈さん。ーー・・柳沢の二つ年上だったかな?
ドレスからチラリと見える、太ももは真っ白で程好い肉付きだった。いかにも男受けしそうな人。
「意味わかんないーー・・。」
女の勘って云うのは当たるものなのよ。きっと彼女ははじめから、私たちを観察していてー・・気付いたんだわ。私と光の中にある"ナニ"かにー・・。
そして、宣戦布告を申し立ててきた。
私にいちいち、確認しなくてもすべて知っているかの様なあの態度。まるで遥くんの女性版よ。
「怖い人っ。」
そう言い捨てて、残りのお茶を飲み干す。
あんな空気のせいで、私の喉はカラカラだった。まさかー・・目の前で直接確認されるなんてね?
恋愛においては、分からない事だらけ。仕事みたいにポーカーフェイスを貫けないし、冷静に対処できない。
その点、遥くんに出会った時の光はいつもと何ら変わりのなかった様に思えた。本当にー・・すごいよ、ある意味。