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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第12章 前夜祭
見知らぬ若い男の人のスピーチが終わった。ハンソンからもらった時計で分数を確認する。丁度10分。話の内容的に・・・代表のキャプテンかなぁ?
しっかりとした話言葉で、
丁寧な口調と熱い意気込みー・・マスコミの取材などでよく聞く単語が並べられていた。
すっかり持て遊ばれてお疲れモードに突入したのだろう。起きることはなさそうなほどに熟睡している紫音を宮元くんから受け取って、たわいも無い話をする。
私の隣には誰も座っていない。
結構長い間話し込んでいるのかな、光と遥くん・・・。
「本当に岸野は酒飲みだよ」
「面白いわね。さっきまであんなマシンガントークやったのに、今は眠たそう」
「面倒臭いだろう?
光と馬が合う意味がわかんねぇもん」
「合うの!?」
「代表の中では仲良しなほうだと思うよ」
「へぇ~意外」
「俺のほうが仲良さそうってアナウンサーの人とか、サポーターの子に言われるけど、そこまでだしね。光とは性格が似てるから逆に2人だけだと気まずい」
「はは、それは分かる。自分と似てる人ってー・・
仲良くできそうに思えるけど案外そうじゃないよね」
「そうなんだよ。まぁサッカーの技術の面では似てないけど」
「そう?背番号1番だし、結構上手な人なんかなって勝手に思ってるで、私」
「まぁー・・海外でプレーできてるから下手ではないね。でもやっぱり光は特別だよ。俺が現役の間にあそこまでの選手出てくると思ってなかった」
「そこまで?」
「あ、みたことない?」
「ううん。あるよ、プレミアムリーグの初戦と決勝戦」
「うわー最高じゃん。両方、ハンソンとの熱戦だったね」
「-・・あぁ、そうだった・・・かも」
私がはじめて本気で人を愛せた事を確信付けてくれた初戦と
私の人生を大きく変えた決勝戦ー・・。
“かも”なんて曖昧な言葉は必要ない。
両方、しっかりと、鮮明に覚えている。
ただー・・ハンソンのことを思い出したくないだけ。