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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第13章 合縁奇縁
「こんにちは~チケットを見せていただけますか?」
「パスなんですけど・・・。」
「--・・あぁ。なるほど!
こちらへどうぞ。ベビーカーはたたんでお持ちになってください」
私が妊娠していると知らない彼女は、そんな事を言いながら、席まで案内してくれた。
ブエノスとアーセの試合を見に行ったときとは、さほど変わらない席に案内される。
選手からは遠いものの、
しっかりと一人一人の位置を確認できて、
ミニテレビまで設置されてあるボックス席。
紫音を気にかけてくれたのか、子ども用のチェアカバーまで持ってきてくれた。
「ありがとう。」
「いいえ、お楽しみなさってください」
横に3席。
そしてー・・・後ろに4席。
合計8席の此処。
誰か来るのだろうか?
それともー・・私のかしきり状態?
圧倒的に日本代表のユニフォームを身にまとった人たちが多いが、
中には、イギリスユニフォームを着ている人もいる。
そこが、ハンソン含めイギリスという国の強さや、圧倒的な雰囲気を物語っていた。完全にアウェーの状態に見えても、こんな遠い場所にも“サポーターが居ること”を忘れさせない。
光とハンソンのチャントが交互に流れている今。
誰もが、普通の顔をして待っていられないのだ。
動くなり喋るなり歌うなりしないと
“ハンソンと柳沢”の試合を直に受け止めることが出来ない。
それは私も同じー・・・。
冷静そうに見えても内心は凄く緊張している。
だから、サポーターの人達の気持ちも理解するのは、たやすい御用だった。