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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第13章 合縁奇縁
やり場の無い想いがこみ上げてきて、うっかり紫音の前で泣いてしまいそうになったが、自制心が働きどうにか耐える。
カバンの中から、よく冷えたお茶が入っている水筒を取り出して、喉を潤してから、紫音に向きなおすとー・・・私をとらえて離さない、赤ちゃんらしくない目を見て驚く。
弱さに気付いてるーー・・?
この子は私が不安定な精神状態の時になきわめいた事もあった。
何も言葉を紡げないまま固まっていると、ふいに口をあけて、喋りだす。
「あー!!」
「うう!」
とても元気でー・・泣きそうな雰囲気ではない。
良かったー・・・。
笑顔がいつもより可愛らしく思え、その顔を写真に収めるべく、カメラのアプリを起動させた私。
「あ・・ムービーやん。まっいいか。」
「しーおーん!」
「うう!」
「ふふ。ん?」
「ああ!」
「今日はパパの試合です。・・・大事な大事な・・・試合です。」
「うう!」
「勝ったらいいね。
彼の悲しむ顔見たくないよね」
「ぱぁぱぁ!!」
「ーーー・・え?」
「ぱぁぱぁ!!」
間違えなく“パパ”って言ったよねー・・・?
「紫音ー・・いま何て?」
「ああ!うう!ぱぁぱぁ!」
これは、何気なく喋っているだけではないことは育ての親になりかけている私には理解できた。きゃー!と叫んでから、ムービー撮影を終わり強く抱きしめるー・・。
腕の中で、ごもごも、まだ元気に喋っている紫音。
この子の知能指数どうなってるの!?
絶対に、天才だよ!やばいよっ!
独り言にしては大きな声で、そう呟いて
いそいでムービを柳沢に送りつけた。
試合開始まで後10分も無いー・・
見てくれたらいいなー・・・。