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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第13章 合縁奇縁
「「ブーーー!!!」」
“何だ、今の判定は!?
おもいっきりファールだろう、あれ!!主審しっかりしろよ!!”
ものすごい剣幕のレポーターと、大勢の観客のブーイングに驚いて、紫音にミルクをあげる手を止めてテレビに目を移す。
勿論、この子も驚いていた。だけど、もともとそんなにお腹は空いていなかったのかミルクをほしがる仕草もしない。
“え~イギリスの6番、キャデオの足が、1番宮元に当たりましたがー・・ファールはなしで、そのまま試合は続行しています”
“ちっー・・岸野あがれ!あがれ!
相手をフリーにさせるな!!”
一瞬、ファールで日本ボールになるだろうと思って動きを止めた何人かの選手の予想は外れて、その行動が種となり、思いっ切り、ハンソンがボールを持って走り出す。
ハンソンの左には、マークスー・・。
追いかけてきているのは、岸野くんと他2人の選手ー・・。イギリス選手も2人、ハンソンの後を追いかけている。
このまま追いつけば、4対3の計算ー・・。
誰かがフリーになるー・・。
どうする?マークスにパスを回して、打たせるか、
今自分でミドルシュートを放ち、
キーパーに1対1の試合を申し込む、宣戦布告ともとれる行為をするかー・・・。
ブーイングと、悲鳴と、喜びの声。
そんな3声が響き渡っている。
だけど気持ちは一緒だ、みんな。
ハンソンの次の行動を、心待ちにしているー・・。
“もっとあがれ!このままだとハンソンにシュート打たれるぞ!あの人は、この距離が一番得意なんだ!
ミドルが最大の武器なのは柳沢も知ってるはずだろ!柳沢が、もっと上がれ!!”
レポーターという事を忘れてしまっている、松永さん。
もともと、代表選手だった人。
持ち前の明るさと能天気さが国民に愛されている理由の1つだ。
だけどー・・柳沢を、この距離走らせるなんて無理よ。
理由は私とサッカー協会の偉い人しか知らないー・・・。
腰の怪我ー・・
紫音を抱いて、2時間ほど歩くだけでも
結構しんどそうなのに、全力疾走ってー・・。
そんな無理を言ってあげないでほしいけど・・それは聞き入れてもらえないだろう。
柳沢が日本に、いや、世界に、怪我のことを公表していないのだから。