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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第13章 合縁奇縁
“マークスと横に並びました!”
“どうするー・・パスかミドルかー・・・。”
今頃、有名な呟きサイトや、学生同士のライングループの会話は、さきほどの主審の大きすぎる“誤審”の話題で持ちきりだろう。
あそこで、ファールを取ってくれていたら、
ゴール内のファールになるため、PKを日本は手に入れることが出来た。
しかも、あれはイエローレベルだ。
それなのにー・・倒れている宮元くんを見て、
試合を中断させることなく、白々しい顔で続行ってー・・。
最大の職権乱用よ。
FIFAの審判選びはどうなってるの?
国籍は?育ってきた場所は?親の国籍は?
そんな文句で口を割りそうになった。
緑色の大きなピッチで、日本のゴールキーパーの真正面ラインにいるハンソンー・・。
そんな彼が、男性にしては少し長い茶色の前髪をかきあげて
確かに少しだけ微笑んだ瞬間ー・・・。
華麗にドリブルしていたボールは、
ゴールネットの真ん中に、押し込まれた。
キーパーは、左に飛んでいる。
間違いなく判断ミスね。
左足で蹴ったからー・・左に飛んでくる可能性を買ったんだろうけど。
少し強めの風のおかげもあってか
いつも以上に大きく揺れるゴールネット・・・。
彼の仲間は、大きな背中に飛びついて、あつく抱きしめていた。
そしてー・・・バッチリと目が合う。
ピッチからも私の席がよく見えるんだろう。
私が、一人一人の選手の顔色までもが分かる様にー・・・。
長い親指をたてて“グッド・ラック”のポーズをしたハンソンは、憎いほどに格好良くて、憎いほどに美しくてー・・・憎いほどにスターだった。
“うわーあの距離で決めるとはねー・・。
まだ開始20分だよ。”
“さすがのハンソンとしか言い様がありません。
アーセがブエノスに負けて、優勝を逃し、
そして昨年度の最優秀選手賞までも、ブエノスの柳沢に取られたことを相当悔しんでいたらしいのでー・・”
“間違いなく、それが原動力だろうね”
私達を指差し、紫音に手を振ってから、
試合を再開させるために自分のポジションにつく彼。
柳沢はー・・珍しく焦った様な顔をしていた。
不思議な気分。
いつもなら試合のときに大げさに怒ったり、悲しんだり、苦しんだりしないのに。