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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第13章 合縁奇縁
“走れ!走れ!まだイギリスは戻ってきてない!いけ!”
松永さんの解説とは言えそうにない解説を聞きながら、
私も紫音を抱きしめて、祈る様に試合を見る。
相手のパスミスから不意に出現した最大のチャンスー・・。
ここ!という決定的なチャンスを得ていなかった日本に前半43分で訪れた転機。ロスタイムは1分。時間的に考えても、これが最後の攻撃だ。
後は、後半戦で持ち返すしかないー・・。
ハンソンと同じパターンを見ているみたいだった。さわやかな大学生選手が、華麗なドリブルテクニックで、ゴールまで近付き、キーパーと少しの間だけ睨めっこしてから、右足で蹴ったボールはー・・。
ミドルとまではいかない長さのもので、
惜しくも、GKのコインローに弾き飛ばされていた。
そしてー・・その毀れ玉を必死に拾いにいく柳沢とマセラ。
マセラが拾いに行く理由は、単純にこれ以上日本に攻撃をさせたくないからだろう。イギリスとしては、このまま前半を終わりたい。
だけどー・・日本は終われない。-・・まだ後半戦が残っているとはいえ、休憩を挟んだら空気も変わるし、もしかしたら相手の選手も変わるかもしれない。
今、絶好のチャンスなのは、
イギリス人選手で、柳沢の近くにいるのはマセラのみ、
そしてゴールネット付近にはキーパーと黒人の強そうな選手1人しか居ないこの状況が、私に教えてくれている。
大学生選手が、緊張していただろうけど
それでも、どうにか自分で自分のキッカケを作ろうと、全身全霊で粘り強くあきらめないで走ってくれた結果ー・・。
その結果を無駄には出来ないー・・。
先輩だから、彼もそう思っているはず。
一度、左足でボールを自分の頭より高く上げてから
胸でワンタッチして、ハンソンが点を決めたときと同じ左足でー・・
しかも、同じくらい離れた場所から、ゴールを狙うー・・。
回転数を増したボールは、キーパーの少し前で、右にカーブをかけて、飛んでいるGKの股下を通って、ネットの中に入り混んだ。
“よっしゃ~!!よくやった、柳沢!!
そして、牛田くんも!よく戦った!!!”
“牛田のゴールが弾かれて、柳沢にー・・。
尊敬している選手、柳沢に自分のミス玉を取ってもらって、さらに点を決めてもらえるなんてー・・っ!!”
「きやぁあああ!!!」