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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第14章 確かな愛
午前十時。病室の扉からノック音が聞こえた。
病室に響く笑い声が止まる。
「ー・・久しぶり。ハンソン。」
心の底から込み上げてくる得体の知らない気持ちが私の決心を揺るがせそうになる。
だけど、そんな事を悟られない様にー・・
私は胸をはり、
姿勢をただしながら彼と握手を交わした。
「小百合、何か飲み物いれてやれ。」
「うん。何が良い?」
「俺は、紅茶。ハンソンは?」
「アイスコーヒーもらえるか?」
「わかったわ。」
今まで英語で会話をしていたから、急に彼のイギリス英語が耳に入っても、何の違和感もなかった。
「紫音~。はは、寝ているのに涎か。」
「あぁ。本当に涎ばっか垂らすやつだよ。」
二人はー・・バチバチと火花を散らして、睨み合う様な真似はせず、至って普通に会話をしている。
ハンソンとはじめて出会った日のパーティーの時、二人が会話していた様子よりも、穏やかに見えた。
やっぱりサッカーが絡むと、ダメなのかなぁ?
「はい。どうぞ、そこのソファー座って。」
「あぁ。」
「よいしょ」
「光、大丈夫なのか?寝たままで良いよ。」
" No problem "
(問題ないよ、大丈夫だ)
たった一言の、そんな言葉だけど、
今の私には凄く力強かった。
「あ、美味しそうだね。」
「病室に有ったやつだから、味の保証はできないけど。匂いは確かに良いわよね。」
「うん。」
ーー・・時計の針が進む音、
こんなに大きかっただろうか?
ーー・・私の心臓の音、
こんなに大きかっただろうか?
「さぁ、本題だ。ハンソン。」
「はは。ーー・・話し合う時が来たんだね。」
「まず先に言わしてくれ。あんたの気持ちも俺は理解出来る。小百合だけなら、まだしも自分の子どもを取られるかもしれない、あんたの気持ちー・・。
だけどな、俺も本気で小百合を愛しているんだ。
だからこそ、こいつの血をついで産まれてくる子を簡単に手放したくない。こいつ自身もー・・。」