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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第2章 可愛いと五月蝿いは紙一重
脳内で流れるメロディーが少しづつ鮮明になっていく。苦手な皮の臭いなんて気にならなかった。
♪夏の雲ときめいては消えていった~
秋の空切なくて冬の海冷たくて~♪
微かに身体に響く揺れがとても心地よい。
嫌いな揺れじゃない。むしろー・・もう一度私を眠らせてくれるかの様な優しい揺れだ。
「っーー!小百合ぃ!!」
「・・・・。っ?!」
「新南の四丁目まで来たぞ!」
「あ、私寝てた?」
「爆睡だよ。爆睡。さぁ普段どの位寝てんの?」
「日によるけど、元々ショートスリーパーではないからあんまり短すぎると時間見つけたら直ぐに寝てまうんよ。」
「気を付けろよ。」
「うん。ー・・あ、六号線筋の交差点辺りでお願い」
「偶然。俺もそこなの」
「嘘?なんかいややわ」
「なんだよ、それ。」
すっかりと眠気が消えた私は首をお越し、運転席を覗き込む。
「ん?」
「マスクもサングラスもしてないの?」
「うん。」
「大丈夫・・?」
「撮影現場に来る事はないよ。パパラッチでしょ?基本的に家とか、有名なバーとかで待機だからさ。」
「そうなんや・・ー。」
でも、もしもの事があって
私の姿も週刊誌にのっちゃったらー・・。
顔は出されないやろうけど
雰囲気とかで、分かる人には分かるだろう。
縁を切った地元の人間にもー・・バレるかもしれない。
車が珍しいっていうのもあるが。
そこから私のしてる仕事がバレたらー・・。
「ぼーっとしてんな。寝起きだから?」
違うわよ、あんたに巻き込まれた場合の事考えてるのよ!
「そう・・かなぁ~?」
解りやすい嘘を付き、鞄から煙草を取り出す。
高校生の時に初任給で買ったワニ皮の煙草ケース。
そんな年から吸ってるんだから、今更辞められる訳ないよね~なんていう言い訳を、今まで何回してきたかー・・。
「俺も吸っていい?」
「信号待ちの時とか、吸わないの?」
「一応、人の車だしさ。」
「はじめてあったラウンジの時から思ってたんやけど、蓮くんって育ち良いでしょ?気が利くし、ふとした所作がすごい綺麗やね。」
「それはよく言われる。俺としては、自覚ないけど」
「自覚なくて、そう思われるのは素晴らしいよ。あ、どうぞ。煙草吸ってね」