この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第1章 遊びと本気
「どうしたの?焼酎なんて。
悪酔いするからやめとけば?」
「ちょっと良いと思ってた子に、お金貸してって言われたんよ」
「いくら?」
「二万円」
「さぁから見れば端金じゃん」
「端金ゆうか・・無かっても困れへんけど財布にようけお金入ってるのに、“貸してくれ”て言う所がいややってん」
「はは、それは確かに嫌だね。」
「せやろう?恋は盲目っていうのはウソやわ」
「恋は盲目って・・でも端から付き合う気とかなかったんでしょ?」
「うん。甘い言葉と甘い時間を求めてただけやった」
「それなら、よくない?
別にその子がダメでも次が居るでしょ」
「居たはるのは居たはるやろうけど、私自分で思うねん。“ちょっとタイプ変わってるんかなぁ”って」
「年収、何千万以上希望?」
「あほ。年収は全くもって気にしません」
といつもの様にくだらない冗談を言いながら運ばれてきたお酒で乾杯し、香りを楽しんでからグラスに口をつけた。ほのかにグラスについたルージュはブラウンピンク。自分が今朝つけた口紅の色を忘れるなんて、私はどんなに疲れているんだろう。
「何頼む?」
とワクワクした顔で、メニューを見せてくる彼女。
「由香に任せる」
「じゃあ・・・」
と由香が言いかけたとき、店内の空気が変わった気がした。
というより、確実に変わった。
「いらっしゃいませ!!」
私のときとは格違いの高く可愛らしい声が次々に聞こえてくる。
響子さんは謙虚に
“小さい店ですが”なんて言ってたが、小さくなんて全然ないし女の子の一人一人の顔の端整さも内装も、全てが“一流”に程近いものだった。
「あ、美山と柳沢じゃん」
「誰?」
「サッカー選手と、俳優」
「興味ないわ」
ボックス席は全て埋まっているから必然的に私達と同じカウンターになるだろう。でもー・・芸能関係の人達の隣に座るのは気が引けた。理由らしい理由はないが、何故か嫌なのだ。
舞い上がっているのは女の子達と由香。
落ち着いているのは響子さんと私のみだろう。
そんな状況に今はただ苦笑いをして、メニューに目を通すしかない。