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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第1章 遊びと本気
「隣、いいですか?」
「全然構いませんよ、どうぞ」
遠慮がちに響子さんに、そう聞かれたら嫌です、なんて言えないに決まってる。
チラリと横を見ると、一瞬、男性と目が合いお互い軽く頭を下げる。
涼しげな瞳に、高くて細い鼻そして薄い唇。誰が見てもカッコイイと口をそろえて言うだろう。
だけど二人とも、色が白いためどちらが俳優で、どちらがサッカー選手なのか分からない。
「で、結局どれ頼もうとしたっけ?」
隣の男性二人組みに目をとられていたのか、そう呟く由香。頬が赤く染まっている。そんなに良い男たちだろうか?
「私は由香に任せるって言うたよ」
隣の女が関西弁だったことに驚いたのか、少しの間視線を感じたが目をあわす事は絶対にしない。表世界の人間に関わりたくなかった。
「そうだった。じゃあ煮物とかそういうのにする?」
「そうだね、私は焼酎だし和食テイストの方が助かるかも」
「由香はカクテルだけどね」
と舌を出して軽く反論してくる。
でも彼女は結局、和食を頼んでくれるだろう。根が優しいことは10年も居れば嫌でも分かる。
“舌切るで”と私も言い返してから突如店内に鳴り響いた大きなカラオケ音に吃驚し、二人してマイクの持ち主を目で追いかけた。