この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第3章 寂しがりやの法則
車を脇にとめる。緑山らしい町並みだ。
もう真っ暗だけど、全く怖さを感じないほど街灯が有る。
緑も多くて、この時間なのにお母さんと子どもと思われる親子がベビーカーをおして散歩している。よほど安全なのだろう。
「柳沢くん。」
「・・・。」
「やーなーぎーさーわー」
「・・・・・。」
バックミラー越しに彼を見るがピタリとも動かない。
“海外”って言ってたから、普段は日本には居ないのだろう。
でも、この風貌だから多分アイドルの様にこっちでは扱われてる筈だ。
休みを取るために日本に帰ってきたのに・・仕事ばかりで疲れたのだろうか?
「嘘やん・・・。」
少し身を乗り出して、彼の肩を強く掴み、揺らしてみる。
「柳沢。おきて」
「ーー・・。」
顔をグシャッとゆがめた様な気もするが、目は開いていない。
信じられない。ただでさえご飯を食べに行って時間を使ったというのに・・・。
ここでも時間を食うの?
「柳沢!!」
「ーー・・っ」
「おきて、」
「・・・。」
僅かな願いも届かない。
少し考えてみる。私も目の前でスヤスヤと眠っている柳沢同様、睡眠時間は欲しい。
このまま、ここで彼を起こし続けても・・・いつ起きるのかなんてわからない。
もしかしたらここで1時間も2時間も経ってしまうかもしれない。
「はぁ。とりあえず連れて帰るか。」
一軒家に住んでるなんて事はありえないし
この目の前にあるタワーマンションに住んでる可能性が高い。
部屋番号が分からないし、
彼がどこに鍵を入れてるのかも分からない。
「それやったら、連れて帰るほうがいいよなぁ?」
もう呆れるしかない。という様な口ぶりで重い気を奮い立たせてアクセルを再び踏む。
駐車場に車を停めれればー・・後は、私が担ぐか何かしよう。
いつもの警備員さんに頼むのもアリだ。