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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第1章 遊びと本気

♪どこまでも~限りなく~
降り積もる雪と貴方への思い~♪

カウンター越しに若い声で一生懸命歌う女性が一人。響子さんは煮物の味付けをしながら微笑み、それを見ている。
まるで母親と娘の様だった。


「お箸進んでないじゃん」

「食べてるよ」

「ウソだ、何考えてるのよ?」

「何も。」


「その“金貸してくれ”野郎の事?」

「それは無いわぁ」


「じゃあ何?」


本当に何も考えてなどいなかった。

由香から香る香水の匂いと逆隣のハンサムから香る香水の匂いが妙にマッチして、少しのんびりとした気分になっていただけだ。

でも、しいて言うなら

「仕事の事かな」


「また?たまには忘れたら?」


「ムリやわ、そんなん」



「どうして?だって、さぁは仮にもその事業に携わってないことになってるんでしょ?

始めの資金援助だけで、今みたいに月々何十万・何百万ももらえてるんだったらそれでいいじゃん。深く考える必要ってあるの?時間の無駄じゃない?」

「私にしか出来ひんこともあるから。例えば女の子のケアとか、イベント事の告知とか、そういうマメな仕事は。
楽して稼げてたら世の中お金持ちばっかりやで」

「はは、それもそうか」

「会社も大きくなってきたし、私の年齢考えても法律的な柵は解けたから、そろそろ子会社作って独立するのも有りやしなぁ」

「でも上は、そのままじゃん。それじゃ“雇われ”って事にならない?」


「今は雇われでいい。
もっと色んなことを学んでから完璧に独り立ちする予定。」



「本当に、あんたって子は周りを良い様に使うわね。頭良いわ、尊敬する」

デンモクを操作しながらそう言われた。

絶対に思ってないだろ、という出来事に今日だけで何回出くわしたのだろうか。




「響子さん、ここは喫煙ですか?」

「えぇ勿論。」
と可愛らしい笑顔で灰皿を渡してくれた。

由香は禁煙者だが、よほどの事が無い限り、私が吸っても文句は言ってこない。

でも問題は逆隣だ。


スポーツ選手なら、副流煙なんて、たまったもんじゃないだろう。


喋りかけて“目の色変えやがって”と思われるのは嫌だけど一応、大人の常識として声をかけてみる事にした。


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