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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第3章 寂しがりやの法則
喋りながらも器用にお箸を進めていく、柳沢はやっぱりサッカー選手なんだな、と改めて実感した。
リーグというものが何なのか、とか、そんなのは分かんないけど、海外を拠点にしているだけあって蓮や遥君とは、また少し違うなぁと思えた。
「うん。わかった。まぁ空港で話すわ。」
「はい、じゃあね。」
【続いては、DFの響さんのニュースです。響さんが主演を務める映画"風と共に"のプレミアム記者会見が昨日行われました。そこで報道陣から聞かれた恋愛の質問に・・】
キャスターが発した人物の名前に、何故か吃驚してしまいお箸からアサリが落ちる。
「どうしたの」
「いや、何も。」
「響の事、苦手なんだろ?」
「え・・?なんでわかったの?」
「分かるわ、ナメてんのか。
そりゃ第一印象あんな感じだったら苦手だろ」
それはあんたも言えないよ!なんて事は勿論、言えなかった。
だけど、柳沢の印象も最悪そのものだ。愛想もなければ笑顔もない。ー・・まぁ、今も笑顔は少ないけれど。
「あれはお酒呑んでたし、仕方ない部分があったけどね~。うちの子もうるさくしとったし。」
「あ、あの子は何してんの?」
「メイクアップアーティスト?やったかな。」
「やっぱり。この前、局で見かけた様な気がしてさ。」
「うん。結構、依頼が多いみたいやから色んな局で色んな人に付いてると思う。」
「まぁ、響も気にしてなさそうだけどな。」
「そりゃ気にしないやろう。彼は、あくまでも"吹っ掛けた側"やのに。」
「ははっ、言うなぁ。」
「私は、あの子の友達やからね~。まぁでも、彼女も多分気にしてないよ。仕事上理不尽な怒られ方を芸能人の人にされる事多いから、メンタル図太くなきゃ、やっていけん言うてたし。」
「色んな人がいるからな、あの世界は。」
「サッカーは?」
「ー・・どうだろ?ましっちゃマシ。でもイジメがあるチームもあるし、そこんとかは変わんないかもね。」
"弱いものを見下すのが人間だし"
と最後に呟いた彼の言葉が妙に頭に残ったまま、私たちは朝食を終えた。