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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第4章 類は友を呼ぶ
ーー・・長い飛行時間が終わり、私はスーツケースを手に待ち合わせ場所まで向かう。
ヒースロー空港から歩いて徒歩三分圏内にある、有名な喫茶店。そこで落ち合う約束をしていた。シャキーラが言うには、彼女の飛行機は私の飛行機より、到着時間が約20分早いらしい。
待つことが苦手な彼女だからー・・なんて思っていたけど、私の予想は見事に裏切られた。お店のドアを開けた瞬間に見えたのは、帰ろうとしている彼女でも、怒った顔をしている彼女でもなく、凄く素敵な笑顔で今にも抱きついてきそうな彼女だった。
「わーお!会いたかったわ!」
「シャキーラ!久しぶり。私もよ!」
軽くキスをして、スーツケースを自分の椅子の横に置く。ヨーロッパは基本的にアメリカより禁煙文化が進んでいない。路上でも吸っている人は多いしよほど高級店じゃない限りレストランなどでも喫煙席が用意されているほどだ。
何も言わずに、彼女は私にライターを差し出す。
そんな好意に甘えて、私は煙草を口に加え、彼女の火を借りた。
「オーダー聞きましょうか?」
「アールグレイありますか?」
「えぇ。」
「じゃあ、それで。ストレートでいいわ。」
「かしこまりました。」
「本当に久しぶりね、半年ぶり・・かな?」
「八ヶ月よ!本当、そういう所適当よね、小百合」
「はは、ごめんごめん。」
「仕事は?順調?」
「えぇ。決して楽ではないけどね。シャキーラは?」
「私は大変よ。給料は良いけど前みたいに遊べなくなったわ。担当している会社が増えたから、その分、家に帰ってもしなきゃいけない事があるしね。」
「あんたが残業って!信じられない」
「するわよ~。何の為にわざわざあの大学行ったも思ってるの。今頑張れば、30になる時には安泰だわ。」
「それもそうね。そこが大手企業のいいところかも」
「自営業は自営業なりの良さがあるじゃない。
スーツを着なきゃいけない訳でもないし、好きな時に休憩できるわ」
「まぁね。無いものねだりよ。」
お互い笑顔を見せながら、少し笑う。私の前に差し出されたアールグレイの紅茶は、日本とはまた少し違い香りが際立っていた。