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「冗談じゃないわよ、一緒にしないで」
第4章 類は友を呼ぶ
「日によって異なりますがー・・有名なピアノ曲から日本の音楽、映画の挿入歌など色々。彼女は歌も上手いんですよ。タイタニックのあの曲なんてー・・本当に是非聞いてほしいです。」
「あなた、高級ラウンジのバーテンダーなのに珍しくよく喋るのね。」
と悪気もなくいい放ったのは、勿論横に座っている私の友達だ。私もまぁ確かにそう思っていたけどー・・言い方ってもんがあるだろう。
「あ、すみません!」
「違うの、謝らないで。不思議に思ったの。
私たちはよく喋ってくれる人の方が好きよ。ねぇ、小百合?」
「ええ。楽しいわ。どうぞ、気を使わないで。」
「ありがとうございます・・。」
ちょっとしょぼんとしている彼が何だか可愛らしく思えて、微笑みながらグランドピアノをもう一度見た時、若い男性集団の内の一人と目が合った。
一応軽く微笑みあうが、特別な気持ちなどない。
これが外国での挨拶なのだ。
「異国の地で日本の歌ー・・聞きたかったわ。」
「あら、小百合。あなたが弾けばいいじゃない。」
「え?」
「よく家で弾いてたでしょ。ベートーベンとか、クラシックも。まだ指は衰えてないでしょ。」
「衰えてるわよ、きっと。」
「いや、大丈夫。私が掛けるわ。1ドル。」
「1ドル?・・はは、本当に笑わせてくれるわね」
「でも、よかったらどうぞ。
音楽があった方が皆さん、お酒が進みますよ。」
「そうそう。きっと酔いも冷めるわ。
一曲弾き語りくらいしてみなさいよ。」
「え~。」
「お願いします!着物でピアノー・・日本独特のゆるやかで優しいメロディー・・。最高だ。」
ここで断れない性格が発揮される。
なんだかんだいって、シャキーラもバーテンダー君も乗り気だ。ここで断るのかー・・?いや、そんな勇気私にはない。
自問自答をして、ため息をつきながら、席を立ちー・・ピアノに向かい歩いていく。
途中、シャキーラの茶々をいれる歓声が聞こえて急に小恥ずかしくなった。
だけど、お客さんは私達以外、あの四人だ。
まぁなんとかプレッシャーに打ち勝てるだろう。