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どうぞ、おひとつ召し上がれ。
第1章 グレープフルーツ・マカロン
信号待ちでそっと手をとられて、そのまま私たちは手を繋いで歩いた。
とあるビルの一角にゲームコーナーがあって、ガラス戸を開けるとすぐ目の前にプリクラの機械が1台置いてあった。
何の迷いもなく、彼がプリクラの中へと進む。
私は引かれた手のままに一緒に入る。
大きなカーテンで仕切られた箱の内側は、真っ白で妙に恥ずかしさを煽ってくる。
お金を入れると、画面が点りガイダンスが始まった。
彼は適当に画面を選んでいる。
私はどうしていいかも分からず、ただ少し下がって彼の後姿を見ていた。
やがて、撮影を知らせるアナウンスが始まった。
彼が私のすぐ傍に立つ。
息遣いを感じるほどの距離感に私の身体は、咄嗟にちょっとだけ強張ってしまう。
「緊張しているの?」
耳元で彼が囁く。
髪の間を縫うように、わざと吐息混じりに。
思わぬことに腰がぞわぞわとしてしまう。