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ふしだらで曖昧
第3章 淡い願い
父の走らせる車が花屋へと着いた。
先に車から降りたのは、男だった。

父と女は車の中で待った。


女は車の中から、店内の様子を眺めた。
父も同様の仕草をしていた。

男がどんな花を買うのか、興味があるのだろう。


父と二人きりになった時は、先ほどの事を何か言われるんじゃないかと想ってた。
考えすぎだったらしくて、安心した。


「あっ、…っ、はあ…」


突然、女が声をあげた。
父はバックミラー越しに、小さく震える女を見つめる。


「茉莉、どうかしたか?」


父の言葉に女は首を左右に振るだけで、答える事は出来なかった。

そして、色とりどりの花を手に、兄が戻って来た。
購入したのはどうやら、造花らしい。


生花を墓に飾ると、手入れや片づけが面倒だと言う話を聞いたそうだ。
造花なら、手入れも必要ないし、定期的に変える心配もない。

遠目で見れば、造花も美しいものがある。


そんな話を車中でしながら、車は墓地へ向かう。

女は片手をスカートの裾を握り、もう片手は口元を覆っていた。
女の肩が小刻みに震え、ほんの僅かにだが、腰が揺れていた。


気付かれてはいけない。

女はその一心で我慢する。
先ほどまではあまり感じなかった刺激。


少し耳をすませば、ほんの僅かに機械音が聞こえた。
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