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第9章 依頼人　瑠璃

その少女は顔にアザを作り
口の端に血を滲ませ呆然と
ただ呆然とビルの前に立ちすくんでいた。

ビルには「上条弁護士事務所」と書かれた大きな看板が掛かっている。

少女は虚ろな目でその看板を見上げていた。

ビルの受付の女性がその異様な風体の少女に気付き
駆け寄ってビルのなかに連れてきた。

相談室が並ぶ広いフロアの一角
奥まった部屋に少女を入れた。

「大丈夫？」

女性は優しく少女に向かって声をかける。

しかし少女は虚ろな目をしたまま
何も答えない。

「すぐ戻るからここで待っててね。
　ね、どこにもいっちゃダメよ。
　ここは弁護士事務所だから安全だから
　ここにいてね」

女性は少女の前に膝まづき顔を覗きこんで
諭すように言葉を掛けた。

でもその言葉も少女に耳には届いていないようだ。

女性は部屋を出て急いで人を呼びに行った。