この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
甘い香
第1章 プロローグ
「はっ…んぁ、やめっ…!」
ネオンが輝き眠ることを知らない夜の街。
そんな輝きも届かない、ビルの谷間から漏れる息遣い。
ガッチリと固定された腕は逃げようとする腰を掴み、もう片方の腕は顔を固定する。
(何で俺、堂嶋先生とキスしてるんだっけ…?)
歯列を割り、口腔内をくまなく愛撫する舌は逃げる舌を絡めとる。
俺、前園 朋佳は初めて味わうディープキスに頭が真っ白になっていた。
「なぁ、いつからソコで働いてた?」
キスの相手、堂嶋 薫は甘く耳元で囁く。その声に背筋がゾクリと震えた。
先生は相手が俺だと気付いていない。
何故なら俺は今、女装しているからだ。
理由は先生が今言った言葉に答えがある。
「代理で、たまに出ているだけだから…もう戻らないと…」
女装の理由は、叔母が経営しているBar『MOON』の深刻な人手不足が原因だ。
女顔の俺は女装したら9割は男だと気付かれることはない。それを利用してたまに叔母の店を手伝っていた。
.