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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第2章 蓮野に降る雪
その尋常でない力だけが、豹変したトンジュの名残をわずかに思い起こさせる。
「行きましょう」
トンジュが歩き始める。サヨンはトンジュに腕を掴まれたまま、意思のない人形のようにのろのろと歩き始めた。
一時かなり烈しくなっていた雪は止んでいる。雲間からひと筋の光が差し込み、蒼月が地上を照らす姿はどこか幻想的であった。
もしかしたら、自分が犯した決定的な間違いは屋敷を出たことではなく、この男と行動を共にしたことではなかったか。